―診療ガイドライン活用事例紹介―

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獨協医科大学病院(栃木県)の取り組み

 獨協医科大学病院は1,167床を有する特定機能病院であると同時に、地域の急性期・慢性期の患者も受け入れ「臨床の大学病院」ともいうべき役割を果たしています。さらに、地域の高齢化・多様化した健康問題に専門的・俯瞰的に対応すべく2016年4月に開設されたのが獨協医科大学病院総合診療科・総合診療教育センターです。総合診療科・総合診療教育センターでは先進的な教育プログラムやイベントを実施しており、その中で診療ガイドラインを活用している取り組みを診療部長の志水太郎先生に取材させていただきました。


 獨協医科大学病院総合診療教育センターの特色について教えてください。

 総合診療科・総合診療教育センターは院内向けにスタッフ、後期研修医、初期研修医、学生に対象を分けそれぞれのレベルに対応した多彩な教育プログラムを提供しています。これに加えて、院外からも参加可能なイベントの開催や依頼を受けての出張教育回診・カンファレンス・講演活動を精力的に行っています。いずれも、次世代ジェネラリストとなるために必要な知識の習得とアイデンティティーの確立を目指しています。獨協総合診療科・総合診療教育センターが次世代ジェネラリスト育成のモデルになり、ここを巣立っていったジェネラリスト達がさらにこの取り組みを広げてくれるとうれしいですね。
<獨協医科大学病院総合診療科・総合診療教育センターのウェブサイトはこちら>
https://www.dokkyogeneral.com/


 独自の「50 journals weekly update conference」があるとお伺いしました。 どの様な活動でしょうか。

 総合診療科・総合診療教育センターが実施する様々な研修プログラムやイベントの中に「50 journals weekly update conference」があります。このカンファレンスを実施する背景には総合診療科の専門性が「総てをカバーすること」であり、そのため新しい知識を全範囲カバーする必要性があるという理由があります。そのため世界で毎週のように発表される論文の知識をアップデートしなければなりません。しかし、多忙な医師が個人で膨大な論文を読み込むことには限界がありますので、診療科としての取り組みとして多人数の利を活かした方法として「50 journals weekly update conference」を考案しました。参加者は総合診療科の医師9名で、カンファレンスで取り上げるコアジャーナル50誌の中から参加者が自由に3論文以上を選んで簡潔なアブストラクトの要約を作り、これを週に一度Google グループで共有します。各人が自由に選ぶため論文が重複する場合もありますが、この仕組みで毎週少なくとも30以上の論文を共有します。共有の際のポイントとして、共有された論文についての批判的吟味は最優先に置きません。批判的吟味をすることが主眼ではなく、感度を上げて知見をアップデートすることに重きを置いているからです。全く吟味をしないのではなく各メンバーが「共有すべきか否か」を判断する際に一応の批判的吟味をし、また実際に興味を持ったものについては各人が原著まで当たって批判的に読んでもらうようにしています。論文の結果を実臨床に適応する場合は原著を読むことは多くの場合必須だと思います。
 毎週最新の論文を読み知識をアップデートすることで世界の診療のトレンドが分かります。それにより日々の臨床行為が変わることがあります。診療ガイドラインについては、原著論文のように頻繁に発表されるわけではないので、「50 journals weekly update conference」ではたまに取り上げられる、といった感じです。最新の診療ガイドラインや論文のフォローには米国のNGC(National guideline clearinghouse)のGuideline summariesやPubMedのEメールアラートなどを利用しています。


 臨床における診療ガイドラインの価値とは何であると思われますか。

 膨大なエビデンスをもとに推奨を提示する診療ガイドラインが発表されることで診療のトレンドが変わる可能性は十分にあると思います。そうした診療ガイドランの実臨床における位置づけは非専門医のためのセーフティネットであり、社会における日常診療の軸を決めうる力があると思います。一方、病態理解の多様化・高齢化の進展もあって患者のバックグラウンドも多様化し、診療ガイドラインを目の前の患者さんにそのまま適用できないケースも多くあります。そうした限界はありつつも、非専門家であっても標準治療を知り治療の軸を決める手立てになる診療ガイドラインには価値があると思います。また、毎日の症例検討会における他科とのディスカッションの際に、診療ガイドラインに記載のエビデンスを挙げることがあります。信頼に足る基準を満たした診療ガイドラインである場合なら、それが信頼できるエビデンスであるというコンセンサスが医師の間で共有されているから議論が成り立つと思います。

(2017年10月24日掲載)


 Mindsガイドラインライブラリからのメッセージ

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